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咳・咳が続く

子どもの咳が続く・長引く咳の原因は?

子どもの咳が続く・長引く咳の原因は?

咳は、気道に入った分泌物や異物を外に出すための「自然な防御反応」として起こります。分泌物や異物は、飛沫や痰となって、口から排出されます。
しかし、呼吸器の疾患や外からのタバコの煙の刺激などで咳が引き起こされることもあります。咳が気になるお子さまを受診する時には、咳以外にもどういった症状があるか、どのくらいひどいのか、咳が悪くなる・良くなるタイミングなども、できるだけ詳しく医師にお話しください。

呼吸器の感染、炎症

鼻咽頭炎、喉頭炎、気管・気管支炎、肺炎、胸膜炎、副鼻腔炎

気道の物理的な刺激

唾液・鼻水の流入、圧迫、異物、乾燥、冷気

胸膜、横隔膜の物理的な刺激

胸膜腔貯留液、横隔膜疾患、腹部膨満、胸壁腫瘍

化学的な刺激

喫煙、刺激性ガス、塵埃

アレルギー性疾患

喘息、咽頭浮腫

心血管系疾患

肺浮腫、塞栓、肺高血圧

神経系疾患

反回神経圧迫、外耳道を介する迷走神経刺激

心因・精神性のもの

心因性咳嗽、過換気症候群

子どもの咳の症状チェック

子どもの咳の症状チェック咳の音は、診断においてかなり重要な情報です。咳の音には色々な種類があります。
受診する時には咳があまり出ないこともありますが、ご自宅で聞いた咳の音の様子をお伝えください。
また、咳の音の伝え方につきましては、下記の咳の音の例を参考にしてください。また、特徴的な咳が出た際は動画で撮っていただけますと、よりスムーズに診断へ繋がります。
  • 乾いた咳:「コンコン」
  • 痰が絡んだような咳:「ゲホゲホ」
  • 犬やオットセイの鳴き声に似た咳:「ケンケン」
  • 喘鳴(ぜいめい):「ヒューヒュー」「ゼーゼー」

速やかな受診が必要な咳

  • 咳がひどくて睡眠などに支障をきたしている
  • 顔色が悪くなっている
  • 異物を誤って飲み込んだ可能性がある
  • 「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」と喘鳴が続く
  • 陥没呼吸(呼吸に合わせて鎖骨の上や肋骨の下が凹む)
  • 肩呼吸している(呼吸する度に肩が上下に動く)
  • 鼻翼呼吸(呼吸する度に小鼻が膨らむ・ピクピク動く・しぼむ)
  • 近づいてみると呼吸する音が聞こえる
  • 自分で水分補給ができない
  • 熱を測ったら38.5℃以上あった

夜だけ咳がひどくなる原因は?

下記の理由によって、夜になると咳がひどくなります。

  • 夜は副交感神経が優位になり、気管支が収縮しやすくなるため
  • 体温と気温の差が大きくなり、温度差によって喉や気管支が刺激を受けやすくなるため
  • 横になって寝ることによって、鼻水や痰が気管へ流れ込みやすくなるため

子どもの咳を引き起こす主な原因・病気

風邪

ウイルスや細菌に感染して起こる疾患です。主な症状としては、発熱や咳、鼻水・鼻づまり、頭痛、腹痛、下痢などがあります。発熱はあってもほとんどが38.5℃以下と、あまり高くなることはありません。「コンコン」「ケンケン」という乾いた咳がよく出ます。
特に小学校に入る前の年齢ですと、まだ体温を調整する機能が未熟ですので、風邪をひきやすいとされています。(乳幼児は1年間に平均6~8回、風邪をひくと言われています)。成長するにつれて、風邪をひく回数は減っていきます。

気管支炎・肺炎・胸膜炎

気管支炎とは、気管や気管支に炎症が起こって、発熱や咳、痰などの症状が出る疾患です。
肺炎とは、気管支炎と似た症状が出るのに加えて、胸部X線写真で肺に異常な影が見られる疾患です。そして胸膜炎とは、胸膜腔に胸水が溜まった結果、胸膜に炎症を起こしてしまう疾患を指します。
これら下気道(かきどう)に起こる疾患は、上気道の炎症(風邪)の悪化をきっかけに発症することがあります。これらの疾患にかかると発熱や咳などの風邪症状が重くなり、ほとんどの割合で長期化します。

ぜん息

喘息とは、気道が急に狭くなって「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜいめい)が出たり、呼吸が苦しくなったりする疾患です。呼吸が苦しくなり、生死に関わる状態まで陥ることもあります。
アトピー素因を持っている方の発症や、アトピー型喘息といって、ダニ、ハウスダスト、カビなどが原因で起こるケースが多く見られ、90%以上が小学校入学前後に起こるとされています。
近年では、アレルギー以外の要因(タバコの煙や感染など)で起こる気道炎症が、喘息の発症に関与しているとも考えられています。

マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎とは、マイコプラズマという微生物が原因で起こる肺炎です。風邪症状や気管支炎といった軽い症状から、肺炎のような重い症状まで、様々な症状が現れます。感染してから発症するまでに1~4週間かかります。発症するとまず発熱が出て、その後に咳がひどくなっていくというのが特徴です。

インフルエンザ

インフルエンザとは、冬に流行するウイルスが原因で起こる感染症です。症状は風邪とよく似ていますが、インフルエンザの方がより重く、かつ長引きやすいです。高熱や鼻水、喉の痛みのほかに、筋肉痛や関節痛、全身倦怠感を伴うこともよくあります。熱が下がるまで、約1週間かかることもあります。
また、肺炎や脳症といった重篤な合併症を引き起こすこともあります。

百日咳

百日咳菌やパラ百日咳菌という細菌に感染することで発症する感染症です。初めは、通常の風邪と同じように咳が出ますが、少しずつ咳が激しくなり、顔が真っ赤になって咳き込みがひどくなります。咳が連続して出た後に、「ヒューヒュー」という呼吸音が聞こえるのが特徴です。発症してから1~2週間目の時期は咳の症状がピークになりますが、3~4週間目になると徐々に治まっていきます。
百日咳はワクチンで予防できますが、ワクチンの効果は4~5歳くらいで低下するため、かかるリスクもあります。
百日咳にかかると、細菌に感染してから7~10日後に症状が出ます。百日咳特有の咳が消えるまで、または抗菌薬を5日間飲み終わるまでの間は、通学・通園することができません。

副鼻腔炎(蓄膿症)

副鼻腔炎は、顔の骨の中(両頬、鼻と額の下の骨の中)にある空洞を副鼻腔と言い、それぞれが鼻と繋がっていて、ここに炎症が起こることです。風邪をひいた後に起こるケースがよく見られますが、ダニ・花粉などのアレルギーやアデノイド肥大、口蓋裂(こうがいれつ)、受動喫煙などが発症の引き金になることもあります。
2歳~5歳くらいの子どもによく見られ、風邪が長期化したように鼻水や鼻詰まりが続きます。さらに、咳(特に日中・夜間)や発熱を伴うこともあります。夜になると症状が悪くなりやすいため、夜間の症状には気を付ける必要があります。

アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎は、花粉やハウスダストなどの物質に対して身体が過剰に反応することで起こる状態です。花粉の飛散する季節のみに症状が出る「季節性アレルギー性鼻炎」と、ハウスダスト(ダニ・カビ・獣毛・フケなど)に反応する「通年性アレルギー性鼻炎」に分かれます。
どちらも鼻水や鼻づまり、くしゃみなどの症状が出ますが、咳や目のかゆみ・充血に悩むケースもあります。治療では、原因となる物質を避けたり除去したりすることが重要です。薬や免疫療法で症状を抑えることもできますが、効果が見られない場合は手術などが検討されます。

気道異物

食べ物や異物を飲み込んだなどによって、喉や気管、左右の肺と繋がっている主気管支が塞がれると窒息します。空気が少し通過できる場合でも、呼吸が苦しくなり、咳が長引いたり「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」と喘鳴が出たりします。異物が移動して窒息する可能性があるので、気道に異物が入った場合は、迷わずに救急外来へ受診してください。なお、異物はX線では見えないことも多いため、CTや内視鏡検査などで調べることもあります。

※「誤飲」と「誤嚥」の違い

飲み込んだものが気道に入ることを「誤嚥」と言い、食道に入ることを「誤飲」と言います。小さい子どもは「誤飲」をすることが多く、せきや嘔吐などの症状がなにもなく、声が出る状態でしたら救急要請を行う必要はありません。ただ、先端が鋭利なものやボタン電池などの誤飲は注意が必要です。その際は救急医療機関へ問い合わせし、受診が必要かどうかを確認してください。
また当院ではX線検査にも対応していますので、飲み込んでしまった時など心配な場合はぜひご相談ください。(レントゲンでは確認できないものもあります。)
一方「誤嚥」をすると、ひどい咳や呼吸困難が起こります。一時的な咳で治まることもありますが、咳が続いたり一度治ってからまた咳がひどくなったりした場合は、誤嚥性肺炎が疑われます。この場合も、診察とX線検査が必要ですので、早めに受診してください。

胃食道逆流症

食べ物や胃液が、食道へ逆流する状態です。げっぷなどで胃の内容物が逆流する現象そのものは珍しくありませんが、逆流によって食道が炎症を起こした場合、胃食道逆流症の診断がつきます。

逆流したものが気道へ入ったり、食道にある咳受容体を刺激したりすることで、咳が出やすくなります。また、大人によく見られる逆流性食道炎の場合も、咳が長引きやすくなるという特徴を持っています。

「日中に乾いた咳が出る」「横になった時に咳がひどくなる」といった様子を見せている場合は、胃食道逆流症の可能性が考えられます。

心因性咳嗽(がいそう)

咳嗽とは咳のことです。心因性咳嗽は、ストレスや緊張などが気道に影響することで発症すると考えられています。乾いた咳を繰り返すのを特徴としており、覚醒している日中によく出る傾向があります。また、就寝中には咳があまり起こりません。さらに、季節によって誘発・悪化することもありません。
気管支喘息や副鼻腔炎、咳喘息、胃食道逆流症などの疾患の可能性がないかを調べてから診断をつけるので、確定診断が下されるまである程度の時間がかかってしまいます。

咳が止まらないとき、軽減させる対処法

室内の湿度を上げる

空気が乾燥すると喉が刺激されるため、咳が出やすくなります。加湿器を使ったり濡らしたタオルなどを干したりして、室内の湿度を高めるように心がけましょう。湿度は「60%以上」に保つのが望ましいです。喉に水分を与えるため、温かい飲み物を飲んだりのど飴をなめたりするのもお勧めします。
ただし、湿度が高すぎるとカビが繁殖しやすくなるので、定期的に換気や掃除も行いましょう。

室温を上げる

咳は体温と室温の差によって悪化することがあります。寒い季節には部屋を暖かくして、咳を和らげましょう。

水や氷を摂ってみる

咳が何度も出ている場合は、一口水を飲んでみましょう。氷を1つなめるのもお勧めします。

(喫煙習慣のある保護者さまの場合)禁煙を始める

タバコの煙によって咳が悪化することもあります。禁煙週間のある保護者さまはお子さまの健康のためにも、ぜひ禁煙を始めてみることをお勧めします。
もし喫煙をする際は、お子さまのいない場所で吸い、喫煙後から45分間はお子さまと同じ部屋に入らないようにしてください。

上体を少し高くする

夜中に咳き込んで眠れない場合は、腰や背中にクッションを入れて、上体を高くして寝ると楽になります。

部屋をこまめに掃除する

アレルギーの有無を問わず、ハウスダストは咳を引き起こす原因になります。部屋はこまめに掃除して、常に清潔を維持できるようにしましょう。特に、寝室はハウスダストが溜まりやすいので、きちんと掃除することをお勧めします。日中には窓を開けて、空気を入れ替えましょう。